高額なお金の管理支援を、AIでもっと身近にできるか——最初の設計を56日から「一度だけ」に変えた

高額な資産管理支援の一部を、AIやソフトウェアでもっと身近にできるか。56日間の比較実験を始める前に、一度だけ現在地を整理する設計へ戻した理由と、まだ実行していないことを記録します。

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高額な資産管理サービスで提供されてきた機能のうち、情報整理、計算、現在地と目標の差の可視化を、AIやソフトウェアでもっと身近にできないか。

その可能性を確かめる研究を始めた。

ただし、個人の金融情報を使った実験はまだ行っていない。現時点で確認できているのは、公開資料と架空データを使った設計・計算・画面と、個人情報を外へ出さずに試すための制約までだ。

この記事は成功報告ではなく、最初の研究計画を見直し、実験を小さくした記録である。

研究の目的

資産、負債、年間収支、目標をまとめて整理し、「今どこにいて、目標までどれくらい差があるのか」を把握する。

こうした支援には価値がある一方、継続的な費用や相談の心理的な壁がある。そこで、専門家による判断や提案ではなく、その手前にある情報整理と可視化を、一般の人にも使いやすい入口へ変えられるかを研究対象にした。

現在の対象は次の範囲に限定している。

  • 資産・負債・年間収支・目標の整理
  • 現在地、目標、差の計算
  • 注意して見直すべき点の表示
  • 入力負荷、分かりやすさ、判断への役立ち方の評価設計

税務・法務判断、相続設計、保険や金融商品の提案、適合性判断、口座接続、取引は対象外である。

最初は56日間の比較実験だった

初期案では、1回だけ使う場合と継続して更新する場合を56日間で比較する計画を作った。

しかし、実行前のレビューで順番が逆だと判断した。

一度だけ使う基本体験が分かりやすいかも確認していない段階で、継続利用の価値を測ろうとしていたからだ。期間が長く、測定項目が多いほど研究らしく見えるが、最初の利用価値が曖昧なままでは、複雑さだけが増える。

そこで、56日間の比較は将来の任意研究へ移し、最初の段階を「一度だけ現在地を整理する」体験へ変更した。

確認したいことは単純である。

  1. 必要な情報を無理なく入力できるか
  2. 現在地・目標・差が分かりやすく見えるか
  3. 結果が次に考えることを明確にするか
  4. 得られる価値が入力と確認の負担に見合うか

個人情報を使う前に、架空データで作った

個人の金融情報は、試作品だからと気軽に扱えるものではない。

最初に公開資料から必要な考え方を整理し、架空の資産・負債・収支・目標だけを使って計算と画面を作った。架空データでは、入力から結果表示までが意図どおり動くことを確認している。

その後、自分自身を最初の検証対象候補とし、個人情報を扱う場合の条件を固定した。

  • 外部サービスやAIエージェントへ送らない
  • 本人だけが入力し、本人だけが結果を確認する
  • 承認したローカル保存場所だけを使う
  • 実行は1回に限定する
  • 保存と削除の期限を決める
  • 既存結果を勝手に上書きしない
  • 実行可能な期間が過ぎたら停止する

これらの条件が実装に反映されているかを、自動テスト76件と読み取りだけの端末確認8項目で検査した。アプリのビルドも完了している。

ただし、この数字は「完全に安全」という証明ではない。決めた制約が現在の実装に入っていることを確認した証拠である。

まだ実行していないこと

ここは明確に分けておきたい。

  • 個人の金融情報はまだ入力していない
  • 個人データによる現在地整理はまだ実行していない
  • 生活上の判断に役立つかは未検証
  • 時間を節約できるかは未検証
  • 継続して使う価値があるかは未検証
  • 専門家の支援のどこまでを補助できるかは未検証

したがって、これは金融助言サービスの効果を示す事例ではない。個人情報を扱うサービスの入口を、どの順番で検証するかという設計ログである。

今回の学び

大きな構想ほど、最初の実験は小さい方がいい。

「富裕層向けサービスを大衆化する」という大義から考えると、機能を増やしたくなる。しかし、最初の利用者に必要なのは、多機能な仕組みではなく、自分の現在地を一度整理できる分かりやすい入口かもしれない。

AIにお金の判断を任せたいのではない。自分で考えるための現在地を、分かりやすく整理したい。

次に個人データを使った検証を行う場合も、金額そのものを公開することはない。公開できるのは、入力負荷、分かりやすさ、設計を変えた理由、まだ分からないことまでである。

作った機能だけでなく、なぜ止まり、何を小さくし、何をまだ試していないのか。そこまで含めて、build in publicの記録として残していく。